1968~69 Mad River – Mad River / Paradise Bar And Gill

1968~69 Mad River - Mad River / Paradise Bar And Gill
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1960年代、米サンフランシスコ・ベイエリア(San Francisco Bay Area)から数々の革新的なサイケデリック・ロックバンドが誕生したが、中にはその存在を見落とされてしまうグループもあった。

その代表が「マッド・リバー(Mad River)」である。彼らのキャピトル盤アルバム2作の売り上げは微々たるものであった。

サンフランシスコという場所であまりにも多くのバンドが結成されたというのは、売れなかったという失敗の理由の一つに過ぎない。

ハードサイケデリックバンドであるマッド・リバーを語るために必要なキーワードは、様々な要素の組み合わせ、遠回しで曖昧な歌詞、そして簡単にはカテゴライズできない複雑でマルチセグメントな曲というところだろうか。

彼らのイメージが、明らかにダークかつサンフランシスコの心地よいサウンドとは真逆の荒々しい雰囲気に傾きがちであると認識されたのもうなずける。

マッド・リバー(Mad River)のバイオグラフィ

「マッド・リバー」は1965年、米オハイオ州のイエロー・スプリングス(Yellow Springs)で結成された。その後ワシントンD.C.(Washington , DC)、そして1967年初旬にはカリフォルニア州バークレー(Berkeley)へと拠点を移す。

複雑な表現、東洋の影響を受けたマイナーキーのメロディ、いくらかカントリー・ジョー&ザ・フィッシュ(Country Joe & the Fish)に似たスタイルもあり、ある意味では、ベイエリア・ロックにしっくりなじんでいたとも言える。

彼らのギラギラとした揺れ動くギタースタイル(特にデビッド・ロビンソン(David Robinson)(リードギター)とリック・ボックナー(Rick Bockner)(セカンドギター))は、クイックシルバー・メッセンジャー・サービス(Quicksilver Messenger Service)を彷彿とさせる(マッド・リバーのギターはもっと荒々しくとがった感じがあるが)。

しかし、クイックシルバー・メッセンジャー・サービスと決定的に違う部分は、リードボーカルでもあり主に作詞作曲を担当するローレンス・ハモンド(Lawrence Hammond)のナーバスな震え声であろう。

それらの要素は、地方の小さなレーベル、ウィー(Wee)から1967年にリリースされた貴重なデビューEPにもすでに盛り込まれている。

後にデビューアルバムに再収録される”Wind Chimes”、ファーストLPに”Amphetamine Gazelle”として収録される“A Gazelle”、秀逸な反戦ソング”Orange Fire”(アルバムに収録されることはなかった)の3曲は、エース(Ace Recods)のコンピレーションアルバム『The Berkeley Eps』に収録されている。

EPやライブ、またサンフランシスコのバンド、ザ・ディガーズ(the Diggers)とのイベントを通じて、マッド・リバーはベイエリアの人々の支持を受けた。

有名な作家、詩人であるリチャード・ブローティガン(Richard Brautigan)も彼らのファンであり、バンドが売れなかった厳しい時代に食べ物を差し入れたりといったサポートを行っていた。

キャピトル・レコード(Capitol Records)はサンフランシスコのバンドの獲得に力を入れている時期であり、1968年にマッド・リバーと契約を結んだ。

1968年『Mad River』

フレッド・ニール(Fred Neil)、ハーツ&フラワーズ(Hearts & Flowers)、ストーン・ポニーズ(Stone Poneys)といった大胆なアーティストを手掛けたキャピトル・レコードのプロデューサー、ニック・ヴェネット(Nik Venet)と共に、セルフタイトルのデビューLPを製作し、これが彼らのベスト盤と言われている。

リラックスムードで始まるオープニングトラック①“Merciful Monks”では、ハモンドはまるで(アルバム全曲に言えることだが)誰かに急かされているかのように歌う。そして不穏で絶えず変化するとげのあるコードへと突き進む。荒々しいギターがリードし、耳障りなメロディと変化に富んだリズムでほとんど即興とも言える音を作り出している。

マッド・リバーはアバンギャルドジャズ、インド音楽、ブルース、フォーク、アシッドロックなどがうまく混ざったテイストで、時にマザーズ・オブ・インベンション(the Mothers of Invention)のようなインスツルメントいろの強いサウンドとなっている。

②”High All the Time“のような穏やかなトラックですら、ハモンドの苦しそうなハイピッチのボーカルは、不穏で不安を掻き立てるような雰囲気を醸し出し、まるで至福のサイケデリックトリップが悪夢に変わるまさにその瞬間を切り取ったかのようである。③”Amphetamine Gazelle”は、そのスピード感や激しくストップ/スタートを繰り返すリズムで、危険で不安なものを抱え過ぎた人の感情を表しているようである。

④”Eastern Light”はA面の最後に収録されている曲であり、ハモンドのボーカルでエキゾチックな雰囲気に仕上がった葬送行進曲のようなサイケデリック・ラブソングである。

⑤”Wind Chimes”は、マイナーキーのソロを響かせるグループの特徴をわかりやすく表している。⑥”War Goes On”はおそらくもっとも長く聞かれ続けた曲であり、1968年終わりの見えない希望のないベトナムで繰り返されたであろう。そしてアルバムを締めくくる⑦”Hush Julian”は、ハモンドのいつもの神経質な声で、子守歌がまるで核戦争の大惨事のように恐ろしく聞こえる仕上がりとなっているが、短く美しいフォークバラードである。

1969年『Paradise Bar and Grill』
1969年『Paradise Bar and Grill』

ラジオ放送に適したメロディではなく、理解するのに数回聞き直さなければならない作品が多かったため、 マッド・リバーは酷評を受け商業的に大失敗した。

彼らのセカンドアルバム(ラストアルバムでもある)『Paradise Bar and Grill』(1969年)では、デビュー時のスタイルを突然一変する。

ヤングブラッズ(the Youngbloods)のジェリー・コービット(Jerry Corbitt)プロデュースで、コービットとヤングブラッズのメンバーでもある通称:バナナ、ローウェル・レヴェンジャー(Lowell “Banana” Levinger)もスチールギターで参加している。ほとんどのトラックは落ち着いたカントリーロック調となり、ハモンドのマール・ハガード(Mere Haggard)のようなカントリーアーティストへの愛情があふれている。

同時に彼らの昔ながらのハードロックギターのミステリアスでハミングするのも難しいメロディが時折現れることもあり、音楽的にもどっちつかずのまとまりのないレコードになってしまった。

1曲目の⑧”Harfy Magnum”は、ジョン・フェイヒー(Joh Fahey)のようなアバンギャルドなフォークギターが聞かれ、彼の影響を受けたことを表れているトラックである。

カントリーロック調のタイトルトラック⑨”Paradise Bar and Grill”でもハモンドの悲しみに満ちた声が聴ける。リチャード・ブローティガンが詞を提供しナレーションも担当した⑩”Love’s Not the Way to Treat a Friend”は、メロウなフォーク調である。

(マッド・リバーは、売れなかった時代にブローティガンから受けた恩恵を常に心に留めており、キャピトル盤の売り上げのいくらかをブローティガンの詩集『Please Plant This Book』の出版のために使っている。)

リスナーはリラックスしたカントリーロックレコードがくると思うかもしれないが、⑪”Leave Me/Stay”では昔のように苦悩を伴ったハードロックへと方向性を戻した。

ロマンチックな哀歌を大幅にダウンキャストしたものだが、『Mad River』の④”Eeastern Light”に表れている絶望感が続いているかのようである。

ジェットコースターに乗っているかのような激しいサウンドは、楽しいアップテンポなホンキートンクが響く⑫”Copper Plates”(シングルとしてもリリースされたが、もちろん厳しい結果であった。)や準クラシックなギターとリコーダーの⑬”Equinox”にも表れている。

LPのB面はもはや予測不能と言える仕上がりになっている。

⑭”They Brought Sadness” は無調のギターで強調された混乱した歌詞となっている。⑮”Revolution in My Pockets”は、穏やかなフォークギターと歌詞のついていないハミングで、いくらか気取ったファンクロック調の序奏で始まる。

続く⑯”Academy Cemetery”は、ラテン風のドラムをバックにエレクトリックギターと、インスツルメンタルのショーケースとも言える仕上がりである。そしていよいよ素朴なカントリーロック⑰”Cherokee Queen”である。

キャピトル盤のリリースに際し、どのような戦略が練られたのかはわからない。しかしこのアルバムは192枚という売り上げ枚数にも関わらず、ヒットチャートとなった。

正当に評価されないことへのフラストレーションもあり、マッド・リバーは1960年後半に解散した。

おそらく彼らの大胆かつ無謀な音楽的実験とも言えるやり方が解散へとつながってしまったのであろう。しかしこのアルバムは、当時の色あせない魅力的なサンフランシスコ・バンドにおける彼らの地位を証明するものと言える。

Written by Marios

【曲目】

Mad River 1968
1. Merciful Monks
2. High All The Time
3. Amphetamine Gazelle
4. Eastern Light
5. Wind Chimes
6. War Goes On
7. Hush Julian

Paradise Bar And Grill 1969
8. Harfy Magnum
9. Paradise Bar And Grill –
10. Love’s Not The Way To Treat A Friend
11. Leave Me Stay
12. Copper Plates
13. Equinox
14. They Brought Sadness
15. Revolution’s In My Pockets
16. Academy Cemetery
17. Cherokee Queen

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1968~69 Mad River – Mad River / Paradise Bar And Gillのメンバー

David Robinson – Lead, Lead, 12 String Guitars, Banjo, Tambourine
Rick Bockner – 2nd Lead, 12 String, Guitars, Vocals
Lawrence Hammond – Lead Vocals, Bass, Lead, 12 String, Acoustic Guitars, Piano
Tom Manning – 12 String Bass, Vocals
Greg Dewey – Drums, Vocals, Fence, Worms Recorder

参加アーティスト
Ron Wilson – Congas
Jerry Corbitt – Hawaiian Steel Guitar
Lowell “Banana” Levinger – Pedal Steel Guitar

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